kick the base

好きな映画、音楽、マンガ、プログラム、デザイン、3DCG、ゲームのこと。

ゲーム評: Doki Doki Literature Club!

今回はDoki Doki Literature Club!(以下DDLCと略)についてのゲーム評です。本作はギャルゲーの皮を被ったホラーゲームですので、ホラーゲームが苦手な方、特に精神攻撃を避けたい方はスルーしたほうがいいかもしれません。しかし非常に実験的な本作、ユーザー体験として学びが多いのでぜひプレイしてみてはいかがでしょうか。

無料ですし。日本語パッチありますし。

本評論はネタバレありです。(できるだけ本質的なところは避けて記述するつもりですが)。やはりゲームというのは体験なので、興味がある方は本論を読む前にぜひプレイしてみてください。色々試してトゥルーエンド(?)にたどり着くまでやっても1日で終わるくらいのボリューム感です。

話題になっていたのでプレイしてみましたが、実に語りたくなるゲームでした。そして誰かに語りたくなるゲームというのは良いゲームの証拠です。

メタ的視点とその先

直接は付言しませんが、とある仕掛けがこのゲームのキモであることは間違いありません。ゲーム内の世界が現実世界を侵食していくような、ゲーム内のキャラが境界線を超えてこちらにコンタクトをとってくるような、そんな大仕掛けがあります。が、その「トリックありき」だけではなく、その先にもう一ひねり入れてきたところに価値があると思います。

ゲーム内のキャラクターがプレイヤー自身にアクセスしてくるというメタな展開は、驚きはするものの想定の範囲内ではありました。しかし驚くのはこれからです。

なんとこのゲーム、とある進行不能な状況を打開するためにゲーム内で使用されているユーザープロファイルにプレイヤー自身が手を加える(削除する)という手法を用いていることです。これは新しい。

快感だぜ・・・・オレたちは手を突っ込んだんだ・・・・・・
この限定ジャンケンの仕組み  その構造に手を突っ込んだ
操作しえるってことだ  オレたちがこの世界を・・・・・・・・
震えるぜ・・・・・・・・大仕掛に胸が震える・・・・・・・・!

引用: カイジ【黙示録2 第19話】

こんな気持になることうけあいです。この解法を発見したとき、ざわ…ざわ…しましたね。

初見ではなかなか思いつかない解法だとは思いますが、ゲーム内のキャラクターが直接的なヒントをくれますし、物語上ぐるぐると同じ場所を回り続けるが故に閃く用導線が設計されているところがニクイところ。

また本作がメタ的な視点の作品であると理解していれば、たどり着ける程度の難度ではないでしょうか。

このゲーム内のキャラクターがプレイヤーを束縛し、強制的にループの輪に閉じ込めようとするメタ的視点に対して、その外側からプレイヤーがゲームシステム自体に手を加えるというよりメタな方法で打開するというこの構造を、メメタァ的と呼ばざるを言えません。(言いたかっただけです)

作風やテーマ云々は抜きにして、この2つの大きな仕組みをゲームに落とし込んだ本作は、ある種ゲームの歴史に名を残したと言っても過言ではないのではないのでしょうか。

ホラー演出について

上記の秀逸かつ革新的な仕組みと比べると、ホラー演出そのものは凡庸と言わざるを得ません。が、丁寧に作られていますのでそこについても付言していきます。

文字の恐怖性

本作はゲームシステムとしてはビジュアルノベルですので、文章を読み進めて物語を推進させていくととなります。よって文章と文字を使った恐怖演出がひとつのキーとなってきます。

文章が徐々に破壊されていき、だんだんと意味をなさなくなっていくという手法は比較的多く見受けられます。小説アルジャーノンに花束を/ダニエル・キイスでは文体が崩れていくさまを知能指数の低下を表現するために使っていました。

また映画シャイニング/スタンリー・キューブリックでは「All work and no play makes Jack a dull boy.(仕事ばかりで遊ばない、ジャックは今に気が狂う)」という文章が大量にタイプされた原稿が登場します。ようするに物量のある文字はそれだけでこわいといえましょう。これも本作で多用されているテクニックです。

しかし、本作ではそれら普遍的な手法を踏まえながら、よりゲーム的な表現がとられている点が素晴らしいです。例として下記が挙げられるでしょう。

  • テキストエリアの枠を超えて文章が続く : これはゲームのシステムをあえて破綻させることによってユーザーに不安を与えるというものです。深夜廻というゲームでも近い手法がとられていたので、あとで記事にするかもしれません。
  • 時間経過の表現として、意味不明な文字列が延々と続く : とある教室内の二日間のシーン。強制的に大量の記号の羅列を見続けさせられるというのはなかなかのストレスです。

GUI、それはユーザーとの暗黙の了解

一般のビジュアルノベル同様、本作では本当にシンプルなGUIしか登場しません。しかしそこを逆手に取ってGUIが破壊されたり、選択肢が全て同一になったりと、ユーザーに揺さぶりをかけてきます。

そもそもGUIとは単一のシステムにおいて一意的かつ不可侵なものであるべきで、かつ多くの(まともな)システムではそのようになっているのですが、そこに手を加えることでよりメタ的な演出を強化しているといえるでしょう。

このゲームでは安全な場所はどこにもないのです。

作者とユーザー

上述の進行不能な状況において、プレイヤーはひとりのキャラクターと対峙します。そのシーンに選択肢はなく、そのキャラクターのひとり語りとして淡々と物語が滞留し続けます。

このキャラクターのひとり語りは、キャラクターの声を借りた作者のポエムであり、それが的を得た論評で胸の内を見透かされるような気分になってきます。作者の言葉は恋愛ゲーム、はて本作品の批評も内包されており外側と内側の障壁をねじ曲げてつなげてきます。

このように、ゲームのキャラクターとプレイヤーの距離感がつかめないような、突然パーソナルスペースに他人が立っているような、そんな生理的な気持ち悪さも本作の魅力の一つではないかと思います。

残念なところ

個人的に唯一決定的に残念だったのが、エンディングの歌です。

そこは!

生身の人間の声を使うべきではなかった!

ピアノだけでよかった!

本作に肉体性はいらなかったんだよな…と思う次第。もったいない…

やりこみ要素(?)

ぼくはMacでこのゲームをやったので、ファイルを削除するときにサムネイルが表示されました。

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「ん?.chrという拡張子なのに画像っぽいものが表示されてる」

みなさんも謎の拡張子を見かけたらとりあえずバイナリエディタに突っ込んでみますよね?わかります。

見てみるとこんな感じでした。

monika.chr

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うむ。PNGだ。変換してみたところ真ん中にQRコードぽいのがあったけど解析するのもめんどくさそうなので断念。

natsuki.chr

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これはJPEG。なにやらテクスチャぽい。UV展開済みのジオメトリだったらお手上げだけど、とりあえずプリミティブに貼ってみる。

いくつか試したところPolygon MeshタイプのSphereにPolarでプロジェクションしたらビンゴ!

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こええよ!てかお前誰だよ!!!なつきこんな顔してねぇだろ!ふざけんな!!

sayori.chr

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Oggファイルとのことで変換して再生させてみたけど映像も音も再生されてないぽいので断念。

yuri.chr

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拡張子不明。なにかしらデコードしたら復元できそうだけど断念。

多分他にも

参考サイトなどを見ないでプレイしたためまだまだやりこみ要素はありそうです。

まとめ

ぼくはギャルゲー未経験だったので「本作がはじめてのギャルゲーかー」と感慨深かったのですが、本作は正真正銘ホラーゲームだったので結局ギャルゲー未経験のままということになりました。

Steamアカウントをお持ちでない諸兄はキズナアイのゲームチャンネルでゲーム実況があったのでご覧いただけたら雰囲気はわかると思います。(但し2018/06/20現在最新の【Doki Doki Literature Club!】#13ではエンディングまで到達していません)

再生リスト: Doki Doki Literature Club!

インディーゲームだからこそできるこのトリッキーな世界。ぜひご堪能あれ。

おすすめです!!!